
ストレスを感じたとき、あなたが開けている
「心の道具箱」の引き出しを見てみましょう。
全16問・所要時間は約2分。ふだんの自分に近いものを選んでください。
心理学者ラザルスとフォークマンのストレス・コーピング理論をもとにした簡易チェックです。
大切なのは「どれが正解か」より、状況に合わせて使い分けられることです。
全16問。4つの対処スタイルをそれぞれどのくらい使っているかが、道具箱の引き出しの形で表示されます。
私にもストレスはあります。避けられないことのほうが多い、というのが正直なところです。
ストレスがまったくない暮らしや職場なんて、そうそうありません。どこまでを「多少」と感じるかも、人によって幅があります。結局は、自分にとってどうなのか。とはいえ生活もあるので、嫌だからすぐやめる、というわけにもいかないんですよね。
だから、避けられないストレスとどう付き合うか、その手段をいくつ持っているかが効いてきます。
手段は人によってずいぶん違います。仕事でミスをした日の帰り道に、手帳を開いて明日やることを書き出す人。甘いものを買う人。友だちに「ちょっと聞いて」とLINEする人。今日はもう考えないと決めて、早めに寝てしまう人。
どれも正解です。そのうえで、自分がどの方法に頼りがちで、どれをあまり使っていないかがわかると、しんどい日の選択肢がひとつ増えます。
ストレスコーピングとは
コーピング(coping)は、ストレスに対処するための考え方や行動のこと。日本語だと「ストレス対処」です。
この考え方の土台をつくったのが、心理学者のリチャード・ラザルスとスーザン・フォルクマンでした。二人はストレスを、出来事そのものより、「その出来事をどう受けとめ、どう対処するか」というやりとりとして考えました。同じ出来事でも、受けとめ方と対処の仕方しだいで、心や体への響き方が変わる、ということです。
出来事は選べなくても、対処の仕方は育てていける。ここが心強いところです。
4つの対処スタイル
ラザルスとフォルクマンは、はじめ対処を大きく2つに分けていました。原因そのものに働きかける「問題焦点型」と、湧いてきた感情を整える「情動焦点型」です。その後の研究で、人に助けを求めることや、いったん距離を取ることも、別の形として扱われるようになりました。
この診断では、それを4つに分けました。呼び方は、日常の言葉で。
向き合う(問題焦点型)
「で、どうすれば解決できる?」と考えはじめるスタイルです。情報を集める。計画を立てる。動く。
仕事のトラブルや人間関係の調整、お金の問題のように、行動しだいで変えられる状況で特に力を発揮しますし、「自分で何とかできた」という経験は、次にストレスが来たときの自信にもなります。
このタイプがしんどくなるのは、大切な人との別れや病気のように努力ではどうにもならない出来事まで、何とかしようとして自分を追い込んでしまうときです。変えられることと変えられないことを、紙の左右に分けて書いてみてください。不思議なくらい、肩の力が抜けます。
完璧主義の傾向が強い人は、完璧主義の原因と克服方法も参考にしてください。
整える(情動焦点型)
まずは自分の気持ちを落ち着けよう、とするスタイルで、見方を変えてみたり、受け入れたり、深呼吸したり、書き出したりします。
変えられない出来事のなかでも、心の平穏を保てる。喪失や病気のように、行動ではどうにもならない場面で特に支えになってくれる力です。
一方で、行動が必要な場面まで「受け入れる」で済ませてしまうこともあります。気持ちを落ち着けたら、動ける部分があるかどうかを一度だけ見てみる、という順番がうまく回りはじめると、心も状況も安定してきます。
寝る前に気持ちを整理する方法は、寝る前ジャーナリングのやり方にまとめています。
頼る(ソーシャルサポート)
誰かに話す。助けを求める。
困ったときにそうできるのが、このスタイルです。人とのつながりには、ストレスをやわらげる働きがあると考えられていて、話を聞いてもらう、共感してもらうといった気持ちの支えもあれば、実際に手を貸してもらう支えもある。大きな喪失や、ひとりでは決められない決断のときには、特に心強い引き出しです。
気にかけておきたいのは、頼る相手がひとりに限られていると、その人に負担が集中しやすいこと。相談できる相手を何人か持っておくと、自分も相手も楽になります。「この話はあの人、この話はこの人」と分けられるようになったら、もうかなり上手に頼れています。
離れる(回避・気晴らし)
しんどいことから、いったん距離を取るスタイルです。考えないようにする、別のことに没頭する、気晴らしをする。どれも立派な対処法です。
耐えられないほどのストレスに直面したとき、一時的に距離を置くのは、心を守るために必要なことです。
ただ、長く続けると問題はそのまま積み重なっていきますし、回避ばかりが続くと落ち込みや不安が長引きやすいことも、研究で指摘されています。離れるのは応急処置。少し落ち着いたら、別の引き出しに持ち替えてみましょう。
気晴らしが、買い物やお酒、ギャンブルなど「やめたいのにやめられないもの」になっているなら、買い物がやめられない理由も読んでみてください。
結果の見方
結果は、いちばんよく使っている対処スタイルが「向き合うタイプ」「整えるタイプ」「頼るタイプ」「離れるタイプ」のどれかで表示されます。それぞれの説明は上の章を読んでください。
どの対処法もあまり使っていない人には、4つのタイプの代わりに「道具箱が空きぎみ」という結果が出ます。これは下で説明します。
あわせて、引き出しの使い分けについての表示も出ます。「使い分け上手」は、向き合う・整える・頼るのうち、3つ以上の引き出しをしっかり使えている人に表示されます。ひとつがうまくいかなくても、別の引き出しに持ち替えられる。その調子で。
引き出しが2つの人には、「引き出しは2つ。あと1つ増やすと安定します」と表示されます。あまり使っていない引き出しを、ひとつ試してみるタイミングです。
「道具箱が空きぎみ」と出た人へ。
ストレスを感じても、何もできずにやり過ごしている、あるいはしんどさに気づかないまま毎日が過ぎている、そんな状態かもしれません。
責めなくて大丈夫。忙しすぎたり疲れすぎたりすると、対処法を選ぶ余裕そのものがなくなります。だからまずは、「これをすると少し楽になる」ことを紙に書き出してみてください。温かい飲み物を飲む。5分だけ外を歩く。好きな音楽を1曲聴く。小さなことで十分です。こうした自分なりの対処法のリストは「コーピングリスト」と呼ばれていて、しんどいときに迷わず手を伸ばせるようになります。5個たまったら、道具箱にはもう立派な中身が入っています。
状況に合わせた使い分け
いちばん良い対処スタイルは、ありません。効くかどうかは、状況しだい。
- 行動しだいで変えられる問題(仕事のトラブル、人間関係の調整)には「向き合う」
- 変えられない出来事(喪失、病気)には「整える」
- ひとりで抱えきれないときは「頼る」
- どうにもならないほど疲れているときは、短いあいだだけ「離れる」
実際は、組み合わせて使うのがふつうです。まず気持ちを落ち着けて、次に原因を整理し、必要なら人に相談して、どうにもならない部分は受け入れる。こういう流れで対処できると、ひとつの方法に頼りきるよりずっと消耗しにくくなります。
うまく回った日は、どの順番で何を使ったかをメモしておくと、次のしんどい日の自分専用の手順書になります。
ラザルスとフォルクマンの研究
ラザルスとフォルクマンは1980年代に、コーピングを測る質問紙「Ways of Coping Questionnaire(WCQ)」を作りました。最初の版が1980年、改訂版が1985年で、理論をまとめた著書『Stress, Appraisal, and Coping』は1984年に出ています。
WCQはその後、コーピング研究の代表的な尺度として世界中で使われてきました。この記事の診断はWCQそのものではなく、その考え方をもとに作ったオリジナルの16問です。
よくある質問
Q. 対処スタイルは変えられますか A. 変えられます。対処法は、これまでの経験の中で身につけてきたものです。認知行動療法やストレスマネジメントのプログラムでも、新しい対処法を練習していきます。
Q. 「離れる」がいちばん高く出ました。よくないことですか A. よくないことではありません。しんどいときに距離を取れるのは、心を守る力です。ほかの引き出しがほとんど使われていない場合は、少しずつ増やしていけると安心です。
Q. 気持ちを無視して、問題解決に集中するのはよくないですか A. 短いあいだなら問題ありません。ただ、気持ちを置き去りにし続けると、あとでまとめて疲れが出たり、燃え尽きたりすることがあります。落ち着いてから気持ちを振り返る時間を、ときどき取ってください。
Q. 人に頼るのが苦手です A. いきなり悩みを打ち明けなくてもかまいません。「これ、どう思う?」と意見を聞いてみる、「ちょっと話を聞いてくれる?」と声をかけてみる。小さなところから始めてみてください。
Q. もっと上手にストレスと付き合いたいです A. どんな場面でどう対処したかを、1週間だけメモしてみてください。自分のパターンが見えてきます。そのうえで、睡眠、食事、体を動かすといった土台を整えることも、対処法と同じくらい効いてきます。
相談先
どの対処法を使っても楽にならない、眠れない、食べられない。そんな状態が続いているなら、ひとりで抱えずに相談してください。
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・通話無料)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」:電話やSNSで相談できる窓口の一覧
この記事は情報提供を目的としたもので、医学的な診断や治療に代わるものではありません。
まとめ
ストレスは、なくせません。でも、対処は選べます。
自分がよく使う引き出しと、あまり使っていない引き出しがわかると、しんどい日の選択肢が増えます。まずは診断で自分の道具箱をのぞいてみて、使っていない引き出しをひとつだけ開けてみてください。
いつもなら一人で抱えこむ場面で、誰かに「ちょっと聞いて」と言えた。そのくらいの小さな変化で、道具箱はちゃんと育っていきます。








コメントを残す