
横になっても、頭の中がぐるぐるして止まらない。
仕事のこと、人間関係のこと、将来のこと。眠ろうとすればするほど考えがループして、ますます目が冴えてしまう。気づけば時計の数字ばかり見ている。
あるいは逆に、くたくたなのに、なぜか眠りたくない夜もあります。ベッドに向かう気になれず、意味もなくスマホを触り続けてしまう。
どちらも、意志が弱いから起きているわけではありません。この記事では、頭が止まらない夜と、眠りたくない夜、それぞれに起きていることと、今夜から試せることをまとめます。すでに医療機関で治療を受けている方も、あわせて試していただける内容です。
頭が止まらない夜に起きていること
脳には、休むモードと働くモードがあります。
日中の活動や考えごとは、働くモードを保ち続けます。夜になってベッドに入っても、脳がそのモードから抜け出せていないと、どれだけ目を閉じても眠れません。悩みや不安があると、脳は「解決しなければ」という見張りの状態を続けます。体は疲れているのに、頭だけが起きている。考えすぎの夜は、だいたいこの状態です。
夜の考えごとは、暗さと疲れのせいで、昼より重く見えがちです。夜中に深刻だと思ったことも、翌朝読み返すとそれほどでもない。そういう経験がある方は多いと思います。
ベッドと「眠れない場所」の結びつきを解く
眠れないまま横になっている夜が続くと、脳はベッドを「眠れない場所」として覚えてしまいます。布団に入っただけで、目が冴えるようになる。
この結びつきを解く方法は単純です。眠れないまま20分ほど経ったら、いったんベッドを出る。暗めの照明の下で静かに過ごして、眠気が来たら戻る。不眠の治療で使われている考え方です。
ベッドの中でスマホを見るのも避けてください。光の影響もありますが、それ以上に、脳がベッドを「スマホを見る場所」として覚えてしまいます。ベッドでしていいのは眠ることだけ、と脳に覚え直させていきます。
最初はつらく感じますが、続けると、ベッドに入ったときに眠気が来やすくなります。
寝る前の5分、頭の中を紙に出す
頭に溜まったまま横になると、そのまま考え続けることになります。紙に移すと、置き場所が変わります。
アメリカのベイラー大学で、寝る前に5分間書いてから眠る実験が行われています。57人を2つに分けて、一方は「明日以降にやること」を、もう一方は「今日やり終えたこと」を書きました。睡眠検査の結果、やることリストを書いた人たちのほうが、平均して9分ほど早く眠りについていました。やり残しを頭の中で抱えておく代わりに、紙に預けられたからだと考えられています。
書き方のルール
- 時間は5分から10分。タイマーが鳴ったらやめる
- 誰にも見せない前提で書く。字も文法も気にしない
- 何を書けばいいか分からないときは、「何を書けばいいか分からない」から書き始める
ノートでもスマホのメモでも構いません。スマホを使うなら、通知を切ってから始めてください。
何を書くか迷ったら
明日やること 頭の中にある「やらなきゃ」を、思いつく順に全部出します。細かく書くほど、頭から離れやすくなります。
今日感じたこと 「今日、私は〇〇と感じた」の形で、うれしかったこと、イライラしたこと、モヤモヤしたことを書きます。感情に良い悪いはありません。
言えなかった言葉 本当はこう言いたかった、あのときこう伝えたかった。紙の上なら、誰も傷つけずに書けます。
ありがたかったこと 天気が良かった、おいしいコーヒーが飲めた。そのくらい小さなことで十分です。思い出せない日は「今日も一日終わった」だけで構いません。
自分への問い 明日はどんな一日を過ごしたいか。今、本当は何がほしいか。
書き終えたら、ノートを閉じて「今夜はここまで」と区切ります。
重い話は、寝る直前を避ける
つらい記憶や大きな心配ごとについて書くと、書いた直後に気分が重くなることがあります。押し込めていたものに触れたので、一時的に感じ方が強くなっているだけで、失敗ではありません。多くの場合、数時間から翌日には落ち着きます。
ただ、寝る直前にやると頭が動いて、かえって眠れなくなります。重い話は夕方や夜の早い時間に回して、寝る前は「やること」や「今日の気持ち」くらいの軽さにしておくと、眠りを邪魔しません。書いていて苦しくなったら、途中でやめて温かいものを飲み、別のことをしてください。
何度も同じ出来事に戻ってしまう、書いても書いても落ち着かない、書いたあと日常生活に影響が出る。そういうときは、一人で続けるより、専門家と一緒に扱うほうが安全です。お住まいの自治体の精神保健福祉センターでは、無料で相談できます。
疲れているのに眠りたくない夜
ここからは、もう一つの夜の話です。
「今日も疲れ切っているのに、なぜか眠りたくない」
夜ふかしをしても特にやりたいことがあるわけでもなく、スマホを眺めているうちに深夜になる。これは報復的夜更かし(リベンジ夜ふかし)と呼ばれています。
オランダの心理学者たちは2014年、これを「寝るのを先延ばしにすること」として研究しました。定義は、止めるような事情が何もないのに、寝ようと思っていた時間にベッドに入れないこと。177人を調べたところ、寝るのを先延ばしにする人ほど睡眠時間が短く、日中の疲れも強いという結果でした。
やめられない理由
時間を取り戻したい 朝から誰かのスケジュールに合わせて動き、一日が他人の都合で区切られている。「せめて夜の数時間くらいは自分のために使いたい」と思うのは自然なことです。
明日を遅らせたい 眠ってしまったら、また同じ一日が始まる。夜ふかしには、明日が来るのを遅らせる面があります。
誰にも何も求められない 深夜は、誰の期待にも応えなくていい時間です。ただ、疲れ切った状態で過ごす「自分の時間」は、思ったほど自分を満たしてくれません。だから「もう少し、もう少し」と延びていきます。
SNSを見ていると、ほかの人がみんな充実しているように見えて、焦りが夜への執着をさらに強めることもあります。
今夜からできること
終わりを自分で決める 「23時まで」より「この動画を見終わったら」と、行為で区切ってみてください。眠気に負けて気絶するように寝ると、翌日また取り返そうとします。自分で終わらせた、という感覚を残してください。
スマホを寝室の外に置く 充電器をリビングに置くだけで変わります。意志で我慢するより、手が届かない場所に置くほうが確実です。目覚ましが必要なら、安い目覚まし時計を買ってください。
自分の時間を先に取る これがいちばん効きます。帰宅してすぐ、家事の前でも構わないので、15分だけ好きなことをする。先に自分の時間を取ると、夜に取り返す必要が減ります。疲れ切った深夜の2時間より、まだ動ける夕方の15分のほうが、満足感は大きくなります。
朝に移せないか考える 夜しか自分の時間がないと思っている方も、朝に30分だけ早く起きるという選択肢があります。朝の時間は誰にも邪魔されず、翌日にも響きません。
根っこは昼の過ごし方にある
夜の行動を変えるより、昼の中身を変えるほうが、結局は効きます。
仕事そのものを変えるのが難しくても、仕事の外に、自分なりの楽しみを持つことはできます。趣味でも、小さな集まりでも、くだらないと思っていたことでも構いません。毎日コーヒーを丁寧に淹れる、古い映画に詳しい、家の猫の写真を撮るのが上手い。そのくらい小さな「これは私のもの」があると、夜に取り返したい気持ちは落ち着いていきます。
夜しか自分の時間が本当にない状態が続いているなら、時間の使い方より、抱えている量の問題かもしれません。誰かに渡せるもの、やめられるものはないか、一度見直してみてください。
意識をよそへそらす
頭が止まらない夜の話に戻ります。
眠ろうと焦るほど、脳は目を覚まします。「眠ろう」から「脳を休ませよう」に切り替えてみてください。
普段読まない、少し難しい本を数ページ読むのも一つの方法です。知らない分野の文章を追っていると、脳は悩みのループから離れて新しい情報の処理を始めます。そのうち集中力が落ちて、眠くなってきます。ヒーリング音楽や自然の音を、小さな音で流すのも向いています。
ここでの目的は、眠ることより、悩みから離れることです。眠れなくても、ループが止まっていれば十分です。
考えるのをやめようとするのは逆効果です。「やめなきゃ」という考えそのものが、また一つの考えとして脳を刺激します。今夜は受け止めるだけ、と決めて、浮かんだら紙に書いて閉じる。それで構いません。
寝室と香りを整える
寝具の清潔さは、風水でも基本とされています。実際に、ほこりの多い部屋や洗っていない寝具は、眠りの心地よさに関わります。
- 枕カバーはこまめに替える
- シーツは週に1、2回洗う
- 寝る前に窓を少し開けて空気を入れ替える
- 寝室に余計なものを置かない(スマホも含めて)
全部やろうとすると続かないので、枕カバーだけから始めてみてください。顔に直接触れる部分なので、変化を感じやすいところです。
香りを使うなら、ラベンダーやカモミールなど、自分が好きだと感じるものを一つ決めて、毎晩同じものを使います。続けるうちに「この香りは寝る時間」という結びつきができてきます。苦手な香りを無理に使う必要はありません。妊娠中の方や、小さなお子さんやペットがいる家庭では避けたほうがいい精油もあるので、買うときに確かめてください。
空間の整え方は「掃除で家をパワースポットにする方法」にもまとめています。
眠れないことを怖がらなくていい
眠れないことへの不安で、さらに眠れなくなる。この循環にはまっている方も多いと思います。
一晩眠れなくても、翌日は意外と動けます。横になって目を閉じているだけでも、体はある程度休まっています。「眠れなくても死なない」と割り切るのが、遠回りに見えて近道です。眠れない自分を責める考えが、次の目覚めを呼びます。
8時間眠れれば十分、という基準に自分を合わせる必要もありません。必要な睡眠時間は人によって違います。見るべきは何時間眠ったかより、眠ったことで回復しているかどうかです。その日を過ごせているなら、それがあなたにとっての適量です。
ただ、急に必要な睡眠時間が増えた、いくら寝ても回復しない、何日も眠れない状態が続いている。そういう場合は別の要因が関わっていることがあるので、睡眠外来や心療内科に相談してみてください。処方された薬を使っている方は、自己判断で中断せず、主治医と相談しながら進めてください。
スピリチュアルな見方
スピリチュアルな見方では、考えすぎて眠れない夜は、処理しきれていない感情や課題を抱えているサインとも言われます。
書くことは、表の意識と奥の意識をつなぐ橋のようなものでもあります。「私、こんなことを思っていたんだ」「本当は、こうしたかったんだ」。ペンを動かしているうちに浮かんでくる言葉は、自分からのメッセージとして受け取れます。重たいものを紙に移して手放す、浄化の作業として書く人もいます。
夜中に目が覚める時刻から意味を読む方法は、「眠れないスピリチュアルな意味」にまとめています。
よくある質問
Q. 眠れない夜に運動してもいいですか
寝る2、3時間前の激しい運動は、脳を目覚めさせるので逆効果です。軽いストレッチや深呼吸は向いています。
Q. 書いたノートは読み返すべきですか
読み返す必要はありません。書くこと自体に意味があります。取っておいても、破って捨ててもいいです。捨てることを区切りとして使う人もいます。
Q. 毎日書かないと意味がありませんか
週に一度でも、気が向いた日だけでも成り立ちます。義務になると続きません。
Q. 夜ふかしをやめたら、何もない自分になりそうで怖いです
その感覚は正直だと思います。夜の時間が、唯一の逃げ場になっているのかもしれません。無理に取り上げず、昼のどこかに別の逃げ場を作ってから減らしてください。順番が逆だとつらくなります。
Q. 「どうせ変わらない」と思って動けません
大きな変化でなくて大丈夫です。「明日これを試してみる」という小さな一歩だけ決めて、やってみてください。続かなくても構いません。試すことで見えてくるものがあります。
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この記事は暮らしの工夫を紹介するもので、医学的な診断や治療に代わるものではありません。不眠が続く場合は、医療機関にご相談ください。
参考







