
考えごとをしながら歩いていたら、いつの間にか駅に着いていた。ごはんを食べたはずなのに、味をほとんど覚えていない。そんな「心ここにあらず」の時間は、誰の毎日にもあるものです。
12の質問で、「いま」に気づく力をふり返ってみましょう。理想の自分より、ふだんの自分にいちばん近いものを選んでくださいね。
心理学者ブラウンとライアンのマインドフルネス尺度「MAAS」の考え方をもとに、
日常の場面に置き換えて作った簡易版です。医学的な診断ではありません。
相談窓口を探す(厚生労働省「まもろうよ こころ」)
円に合わせて、4秒吸って6秒吐く。30秒だけ、いまに戻ってみましょう。
参考:ブラウン&ライアン(2003)のマインドフルネス尺度「MAAS」。
原典は15問・6段階のため、ここでの点数は原典の数値とは比べられません。
この診断は、心理学者のブラウンとライアンが2003年に発表したMindful Attention Awareness Scale(MAAS)の考え方をもとに、日常の場面に置き換えて作った12問の簡易版です。原典は15問・6段階なので、点数を原典の数値とそのまま比べられるものではありません。
玄関の鍵を開けたところで、ふと気づく。あれ。駅からここまで、何を見て歩いてきたんだっけ。
お昼に食べたものも、なんだかぼんやりしている。人の話を聞きながら、頭の半分は明日の段取りを考えていた。
体はここにあるのに、心は昨日の後悔や明日の心配のほうへ出かけていて、一日が自動操縦で進んでいく。忙しければ、誰でもこうなります。
マインドフルネスは、その心を「いま」に連れ戻す練習です。今この瞬間に意識を向けて、良い悪いを決めずにただ受けとめる。コツがつかめると、1日1分からでも景色の見え方が変わってきます。
結果の下の呼吸ガイド
結果の下には、「いま、ここで3呼吸」の呼吸ガイドがついています。4秒吸って、6秒吐く。円の動きに合わせるだけの30秒ほどの練習なので、診断が終わったらそのまま試してみてください。
結果の見方
結果は3つに分かれます。
「いまに根を下ろしているタイプ」と出た人は、目の前のことに意識を向けられている時間がかなり多い状態です。食べているときは食べることに、話しているときは相手に。忙しい中でそれができている人は、実はそう多くありません。調子のいい日に何をしていたかを軽くメモしておくと、崩れたときに戻ってくる目印になりますよ。
いちばん多いのが、「いまと自動操縦を行き来しているタイプ」です。余裕のある日は目の前のことを味わえるけれど、忙しい日や疲れた日は、気づけば一日が終わっている。そういう波がある状態ですね。下の「日常でできる5つの実践」から、ピンときたものをひとつだけ選んでみてください。
「頭の中がにぎやかな時期」と出た人は、考えごとや気がかりが多くて、目の前に意識を向ける余裕が少なくなっています。能力の問題というより、いまそれだけたくさん抱えているというサイン。まずは1日1回、呼吸を3回数えるところから。それだけで、もう始まっています。
マインドフルネスとは:今ここを生きる力
もとをたどると、仏教の瞑想実践に行きつきます。
1970年代に、ジョン・カバットジンが宗教色を外してマインドフルネスストレス低減法(MBSR)として体系化したことで、現代心理学の世界に広がっていきました。
カバットジンの定義は、とてもシンプルです。今この瞬間に、意図的に、判断せずに注意を向けること。
ごはんの味や食感を、ちゃんと味わう。歩きながら、足の裏の感覚に気づく。イライラが湧いてきたときに「あ、今イライラしてるな」とわかる。そんな日常の小さな気づきが、ぜんぶマインドフルネスです。
自動操縦モードとの違い
通勤路を歩きながら明日の会議のことを考え、シャワーを浴びながら昨日の失敗をくり返し思い出す。ごはんを食べながら、スマホをスクロールする。
マインドフルネスの反対側にある、自動操縦モードです。
私たちは一日の大半をこのモードで過ごしています。体はここにあるのに、心は過去か未来をさまよっていて、この状態が慢性的なストレスや不安の一因になると考えられています。
裏を返せば、「いま」に戻ってくる瞬間を少し増やすだけで、心が休める時間も増えるということです。
MAASについて
診断の元になっているMAASは、2003年にブラウンとライアンが発表した、マインドフルネス傾向を測るための心理尺度です。オリジナルは15項目。
信頼性の指標を見ると、内的一貫性(クロンバックのα係数)が0.80から0.90前後、再テスト信頼性も0.8前後と報告されています。妥当性についても、うつや不安とは負の相関、ウェルビーイングとは正の相関が確認されています。
ただ、MAASで測れるのは「注意がいまにあるかどうか」の部分で、マインドフルネスには受け入れる姿勢や判断しない態度といった要素もあって、そちらは別の尺度で測られます。
診断結果は、いまの自分の傾向を知る目安くらいに。気軽に、何度でも測ってみてください。
研究でわかっていること
なんとなく良さそう、で終わらせたくないので、研究の中身も具体的に見ておきます。
まずは、ストレスの軽減。複数の研究をまとめたメタアナリシスで、マインドフルネス瞑想にストレスを減らす効果があると報告されていて、扁桃体の活動やコルチゾールの変化を示した研究もあります。
うつの再発予防では、マインドフルネス認知療法(MBCT)が有効と考えられています。うつのエピソードをくり返している方を対象にした研究では、維持療法としての抗うつ薬と比べて、再発率に大きな差が出なかったという結果がありました。薬より優れているという意味ではなく、選択肢の一つとして検討できる、という位置づけです。
脳の変化を調べた研究もあります。8週間のMBSRプログラムの前後で脳の画像を比べたところ、左の海馬で灰白質の増加が確認されました。全脳を対象にした解析では、後帯状皮質、側頭頭頂接合部、小脳でも増加が見られています。学習や記憶、感情の調整、自分を客観的に見ることに関わる領域です。とはいえ参加者は16人の小さな研究なので、結果は慎重に見ておきたいところ。
感情との付き合い方も変わります。感情に飲みこまれずに、少し離れて眺める力が育つ。「あ、今イライラしてるな」と気づけるだけで、反射的に反応せずにすむんです。脱中心化、と呼ばれます。
眠りについても、研究があります。眠らなきゃと焦るかわりに「いま体はこう感じている」と観察するというやり方で、不眠への効果を調べた研究が複数あります。
免疫については、8週間のトレーニングのあとでインフルエンザワクチンへの抗体反応が高まったという研究があります。これも小規模なので、そういう報告もある、くらいに受けとってください。
日常でできる5つの実践
特別な時間はいりません。気になったものを、どれかひとつ。
1. 呼吸に意識を向ける(1分から)
基本中の基本。
椅子でも床でもいいので座って、目を閉じて、呼吸に意識を向け、吸うときは「吸っている」、吐くときは「吐いている」と気づくだけ。
途中で考えごとが浮かんできたら、「考えているな」と気づいて、また呼吸に戻ってきます。浮かぶこと自体は失敗ではありません。気づいて戻れた、その瞬間こそがマインドフルネス。何回それても大丈夫。
ひとりで始めるのが難しければ、診断結果の下の呼吸ガイドを使ってみてください。円が広がるのに合わせて吸って、縮むのに合わせて吐くだけで、30秒の練習になります。
2. 食べることに集中する
スマホとテレビを消して、食べ物をよく見て、匂いをかいで、一口ずつ口の中で味わいます。最初の三口だけでも十分。
レーズン一粒を5分かけて食べる「レーズンエクササイズ」というものもあって、一度やってみると、いつもの食事の感じ方ががらっと変わるので、休みの日にでもぜひ。コンビニのおにぎりが、びっくりするほどおいしく感じる日もあります。
3. 歩きながら足の裏を感じる
かかとが地面に触れる。体重が前に移る。つま先が離れる。
通勤中でも、早歩きでも、感覚に気づけていればできています。
4. ボディスキャン
夜、布団に入ったら試してみてください。
仰向けになって、左足のつま先から頭のてっぺんまで、順番に意識を向けていきます。こわばっているか、ゆるんでいるか。温かいか、冷たいか。直そうとしなくていいので、ただ気づいていくだけです。足のあたりで寝てしまっても、それはそれで成功。
5. 3分間の区切り
忙しい日向け。
1分目は、いま何を感じているかに気づく。2分目は呼吸だけ。3分目は、呼吸から全身へと意識を広げていく。
仕事の合間でも、トイレでも、信号待ちでもできて、タイマーをかけておくとさらにやりやすくなります。3分たって顔を上げたとき、さっきより少し視界が明るく感じたら、うまくいっています。
続けるためのちょっとしたコツ
リラックスは目指さなくてかまいません。目的はいまに気づくことで、リラックスはあとからついてくるもの、と思っておくくらいでちょうどいい。「リラックスしなきゃ」は、それ自体が力みになります。
考えごとも、止めなくていい。考えが浮かぶのは脳の自然な働きで、止めようとするほど増えていくので、「考えているな」と気づいて、そっと呼吸に戻すだけにしておきます。
効果も、すぐには求めないでおきましょう。筋トレと同じで、少しずつ積み重なっていくものなので、まずは1日1分から。集中が続かない、何も変わらない気がする、という時期は誰にでもあります。気づいて戻る。その回数が、そのまま練習です。
それから、過去につらい出来事を経験した方は、いきなり長い時間の瞑想をすると、記憶や感情が強く出てくることがあります。短い時間から始めるか、専門家の指導のもとで行ってください。途中で気分が悪くなったら、目を開けてやめてかまいません。
よくある質問
Q. 診断の結果が低かったのですが
A. いまの傾向を示しているだけで、能力の評価ではありません。忙しい時期は誰でも低く出ます。実践を続けてから、時間を置いて測り直してみてください。
Q. 瞑想中に眠ってしまいます
A. 睡眠が足りていないサインです。責める必要はありません。座って行う、時間を短くするといった調整で変わります。
Q. どのくらい続ければ効果が出ますか
A. 研究でよく使われるのは8週間のプログラムですが、日常の中での実践は、その日のうちに感じられる変化もあります。
Q. 宗教的な要素はありますか
A. 由来は仏教の瞑想ですが、MBSRは宗教色を外して構成されています。実践に信仰は必要ありません。
Q. 治療の代わりになりますか
A. なりません。うつや不安の治療としては、医療機関での治療と併用する形が前提です。
相談先
気分の落ち込みや不安が続いているときは、マインドフルネスより先に、医療機関に相談するのを優先してください。実践は、治療と組み合わせて使うものです。
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・通話無料)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」:電話やSNSで相談できる窓口の一覧
この記事は情報提供を目的としたもので、医学的な診断や治療に代わるものではありません。
まとめ
後悔している過去にも、心配している未来にも、私たちは実際には住めません。住めるのは、いまだけ。マインドフルネスは、その「いま」に何度でも戻ってくるための練習です。
まずは診断で自分の現在地をのぞいてみて、気に入った実践をひとつ、今日から。1日1分の呼吸で十分です。
信号待ちの30秒で、ふっと空の色に気づけたら。それがもう、最初の一歩になっています。
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