
普通に過ごしていたのに、突然、心臓がバクバクし始める。特定の音や匂い、言葉で、過去のつらい記憶が今起こっているかのように蘇ってくる。
もう過去のことなのに、どうして今も苦しまなきゃいけないのか。
フラッシュバックは、つらい経験を抱える人によく起こる症状です。仕組みを理解して、対処法を身につけることで、少しずつ扱えるようになります。
今、起きている方へ
先に、その場でできることを書きます。説明は後回しで構いません。
足の裏を床につけてください そして、床の感触を感じてください。
目に見えるものを5つ、声に出して言ってください 窓、椅子、コップ、壁、床。何でも構いません。
今は安全だ、私は大人だ、と口に出してください
ゆっくり息を吐いてください 吸うより、吐くほうを長く。
落ち着いてきたら、続きを読んでください。
フラッシュバックとは何か
過去のつらい出来事が、突然、今ここで起こっているかのように再体験される現象です。
普通の記憶は、過去のこととして脳に保存されます。でもトラウマの記憶は、脳が適切に処理できないまま、生々しい感覚として保存されてしまいます。
そして、似たような状況や感覚に出会ったとき、脳が危険だと判断します。実際には安全なのに、過去の危険が今ここにあると錯覚してしまう。それがフラッシュバックです。
あなたが弱いから起こるのではありません。脳が守ろうとして、過剰に反応しているだけです。
起きたときの対処法
1. これはフラッシュバックだと認識する
今、過去の記憶が蘇っているだけ。実際には、今ここは安全だ。
そう自分に言い聞かせてみてください。言葉にすることで、少しずつ現実に戻ってこられます。
2. 五感で今ここに戻る(5-4-3-2-1法)
目に見えるものを5つ言う。聞こえる音を4つ言う。触れるものを3つ言う。匂いを2つ。味を1つ。
順番に声に出していきます。声が出せない場所なら、心の中で数えるだけでも構いません。
足の裏を床につけて感触を感じる、今この部屋にいる、今は安全だ、私は大人だ、と現在の事実を口にすることも助けになります。
3. ゆっくり呼吸する
4秒吸って、7秒止めて、8秒かけて吐く。
止めるのがつらければ、吸うより吐くほうを長くする、それだけでも構いません。息を吐くときに、体は休む側に切り替わります。
4. 温度を使う
温かい飲み物を持つ。洗面所でぬるま湯に手を浸す。
体の感覚を通して、今ここに戻る方法です。手のひらで温度を感じているあいだは、意識が現在にあります。
5. 安全な人に連絡する
可能であれば、今フラッシュバックが起きている、話を聞いてほしい、と伝えてみてください。
誰かの声を聞くだけで戻ってこられることがあります。
トリガーを特定する
フラッシュバックには、必ず引き金があります。
ノートに記録をつけてみてください。いつ、どこで、何がきっかけで起きたか。何度か記録するうちに、パターンが見えてきます。
特定の場所でいつも起きるなら、しばらくその場所を避ける。特定の人と会うと起きるなら、距離を取る。
これは逃げではありません。傷がまだ癒えていないうちは、刺激を避けることが必要な自己保護です。
根本的な治療について
フラッシュバックを根本から減らすには、記憶そのものを処理する必要があります。これは専門家の助けが要る領域です。
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)や、トラウマフォーカスト認知行動療法。トラウマ治療に特化した方法があります。
怖いと感じるかもしれません。でも、適切な専門家と一緒に取り組めば、フラッシュバックは減っていきます。生々しかった記憶が少しずつ色褪せて、過去の出来事として思い出せるようになります。
どこに相談するか
トラウマの治療を行っているのは、精神科か心療内科です。
EMDRを実施している施設は限られるので、日本EMDR学会のサイトから探す方法があります。
どこにかかればいいかわからない、費用が心配。そういう場合は、お住まいの自治体の精神保健福祉センターで相談できます。無料で、どの医療機関につなぐかも含めて相談に乗ってもらえます。
今つらくて誰かと話したいときは、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間・無料)があります。
よくある質問
Q. フラッシュバックは一生続きますか
A. 適切な治療とセルフケアで、頻度は減り、強さは弱まり、対処できるようになります。完全に消えないとしても、生活に支障が出ない程度まで落ち着く方は多くいます。
Q. 一人では対処が難しいです
A. 一人で抱え込まないでください。かかりつけ医に「フラッシュバックがある」と伝えるだけでも、適切な支援につないでもらえます。
Q. 職場で起きたときはどうすればいいですか
A. まずトイレなど人目のない場所に移動して、五感で戻る方法と呼吸を試してください。
事前に、触ると落ち着くものを一つ持ち歩く方もいます。鍵でも、石でも、布でも構いません。これに触れたら今に戻る、と決めておくと使いやすくなります。
Q. 記憶がはっきりしないのに、体だけ反応します
A. よくあることです。記憶として思い出せなくても、体の反応として出ることがあります。対処の仕方は同じです。
Q. 治療を受けるのが怖いです
A. 無理に記憶を掘り起こす治療ばかりではありません。まずは今の対処法を身につけるところから始める進め方もあります。初回に、怖いという気持ちも含めて話してみてください。
まとめ
フラッシュバックは、脳が、もう二度とあの痛みを経験したくない、という警告を出している状態です。
あのときは危険だった。でも、今は違う。あのときは子どもだった。でも、今は大人だ。
この区別を脳に繰り返し教えていくことで、過剰な警告は少しずつ減っていきます。
起きても自分を責めないでください。また起きてしまった、ではなく、よく対処できた、と受け取ってあげてください。
あなたのペースで、一歩ずつ。
相談先
よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
お住まいの自治体の精神保健福祉センターでも、無料で相談できます。
※この記事は情報提供を目的としたもので、医学的な診断や治療に代わるものではありません。日常生活に支障が出ている場合は、精神科や心療内科にご相談ください。








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