
悲しい時、泣きたいのに泣けない。涙が喉の奥で固まって、出てこない。
「泣いたら負けだ」「泣いたら弱いと思われる」
そんな声が、心の中で響いていませんか。
でも本当は、泣いて楽になりたい。その矛盾した気持ちに、苦しんでいるのではないでしょうか。
「泣いてはいけない」という学習
子どもは本来、自由に泣くものです。
でも、泣いた時にこんな体験があったとしたら。
「泣くんじゃない」と怒鳴られた。「そんなことで泣くな、情けない」と叱られた。泣いても誰も来てくれなかった。泣いたら、さらにひどい目に遭った。
そういう経験を重ねた子どもは、「泣いてはいけない」と学習します。 泣くことは危険だ、恥ずかしいことだ、と。
大人になった今も、その禁止は無意識のうちに働き続けています。悲しみが込み上げてきても、自動的に押し殺してしまう。
それはあなたが強いからでも、感情をコントロールできているからでもありません。 幼い頃に身につけた、生き延びるための防御です。
涙について、わかっていること
泣くことは弱さではありません。ただ、涙の効果については、正確に知っておいたほうがいいことがあります。
「涙でストレスホルモンが出る」説について
よく「涙を流すとストレスホルモンが体外に排出される」と言われます。
この説は、科学的には裏づけが弱いです。 涙に含まれる物質の量はごくわずかで、それが気分を変えるとは考えにくいとされています。
でも、泣いた後に楽になる現象そのものは、実際にあります。
条件があります
研究でわかっているのは、こういうことです。
泣いた後に気分が良くなるのは、支えてくれる人がそばにいた場合。 あるいは、泣いた後に状況が改善した場合。
一人で泣いただけでは気分が変わらないことも多く、場合によっては、かえって落ち込みが強まることもあります。
つまり、涙そのものより、その涙が受け止められたかどうかが効いています。
だから、この記事の後半で紹介する「誰かの前で泣く」というステップが、実は一番大事な部分になります。
我慢し続けるとどうなるか
泣くことを我慢し続けると、感情は内側に溜まっていきます。
頭痛や胃痛、不眠として、泣けない感情が体を通して出てくることがあります。
涙は、心の膿を出すようなものです。ただし、出した後に手当てが要ります。
涙を解放する3つのステップ
1. 一人の安全な場所で練習する
まずは一人きりの、安全な場所から始めてください。
部屋の鍵をかけて、誰にも邪魔されない時間を作る。柔らかい布団に包まったり、悲しい映画を見たり、心を動かす音楽を聴いたりしてみる。
最初は涙が出なくても構いません。
「泣いてもいいんだよ。ここは安全だよ。誰も叱らないよ」
そう自分に語りかけてみてください。
もし少しでも涙が出てきたら、押し殺さないでください。何十年も堰き止めてきた涙は、少しずつしか流れません。 それで大丈夫です。
2. インナーチャイルドに「泣いていい」と伝える
泣けない時、想像してみてください。幼い頃のあなたが泣いている姿を。
その子は、どんなに悲しかったでしょう。でも、誰も抱きしめてくれなかった。誰も「泣いてもいいよ」と言ってくれなかった。
だから、泣くことを諦めてしまった。
今、大人になったあなたが、その子に語りかけてあげてください。
「泣いてもいいんだよ。我慢しなくていいんだよ。ずっと頑張ってきたね。もう大丈夫だよ」
その子が泣くことを許された時、大人のあなたも泣けるようになっていきます。
3. 信頼できる人の前で泣く
一人で泣けるようになったら、次は誰かの前で泣くことです。
そして、ここが一番効きます。
先ほど書いた通り、泣いた後に楽になるかどうかは、それが受け止められたかどうかで変わります。一人で泣くだけでは、流しただけで終わることがあります。
「泣いても大丈夫」「弱さを見せても受け入れてもらえる」
その体験が、心に新しい学習を刻みます。子どもの頃に得られなかった応答を、今受け取り直すということです。
最初はカウンセラーやセラピストの前で泣いてみるのもいいと思います。仕事として受け止めてくれる相手なので、気を遣わずに済みます。
あるいは信頼できる友人に、こう頼んでみる。
「今日は泣きたい気分なの。そばにいてくれる。何も言わなくていいから」
誰かの温かい存在の中で泣く時、「一人じゃない」ことを実感します。その体験が、孤独だった子ども時代のあなたに届きます。
泣けない自分を責めないでください
一つ、書いておきたいことがあります。
泣けることが、回復の証明ではありません。
泣ける人が健康で、泣けない人が問題を抱えている。そういう話ではありません。
感じないようにして生き延びてきた期間が長いほど、開くのに時間がかかります。泣けない期間があること自体が、あなたがそれだけ守ってきたということです。
泣けるようになることを目標にしなくて大丈夫です。 「泣いてもいい」と自分に許可を出せた時点で、もう変化は始まっています。
よくある質問
Q. 何十年も泣いていないのですが、今さら泣けますか
A. 可能性は十分あります。扉が開くきっかけは人それぞれです。映画、音楽、書くこと、体を動かすこと、カウンセリング。いろいろ試してみてください。
Q. 泣こうとしても身体が固くなってしまいます
A. 「泣いてはいけない」という禁止が、体に刻まれているサインかもしれません。まず体の力を抜くことから。深呼吸、ゆっくりしたストレッチ、温かいお風呂。体がゆるまないと、感情も動きません。
Q. 泣き始めると止まらなくなるのが怖いです
A. その恐怖は自然なものです。でも、感情は波のようなものです。押し寄せてきても、必ず引いていきます。永遠に続くことはありません。
もし怖くなったら、周りを見回して見えるものを5つ数えてみてください。足の裏が床に触れている感覚に意識を向ける。今この部屋にいることを確認すると、落ち着きやすくなります。
Q. 人前で泣いてしまい、後で恥ずかしくなりました
A. よくあることです。ただ、受け止めてもらえたなら、それは良い体験になっています。恥ずかしさは後から来る反応で、そのこと自体は失敗ではありません。
Q. 泣いた後、余計につらくなりました
A. 一人で泣いた場合や、泣いても状況が変わらない場合に起きやすいことです。泣くこと自体より、その後に誰かと話せたかどうかが影響します。 つらさが続くなら、話せる相手を探してみてください。
Q. 涙が止まらない日が続いています
A. 一時的なものなら回復の過程ですが、日常生活に支障が出るほど続く場合は、別のことが関わっているかもしれません。心療内科やカウンセラーへの相談も考えてみてください。
まとめ
泣くことを許すことは、弱さを認めることではありません。
自分の人間らしさを取り戻すことです。
そして、涙は流すだけでは足りないことがあります。誰かに受け止めてもらえた時に、はじめて効いてきます。
「泣いてもいい。弱音を吐いてもいい。完璧じゃなくてもいい」
その許しを、どうか自分に与えてあげてください。
相談先
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
※この記事は情報提供を目的としたもので、医学的な診断や治療に代わるものではありません。








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