
夜、部屋が静かになると、心がぽっかり空いたような感じになる。
誰にも会いたくない。でも誰かがそばにいてほしい。一人でいたいはずなのに、この寂しさがつらい。
自分でも意味がわからなくて、気まぐれなのかなと思ってしまう方が多いです。
でも、この二つは矛盾していません。同時に存在するのが普通です。
「一人でいたい」と「寂しい」は対立しません
心理学に、自己決定理論(Self-Determination Theory)という理論があります。デシとライアンという研究者が提唱したもので、人には三つの基本的な心理欲求があるとされています。
- 自律性:自分で選んでいるという感覚
- 有能感:自分にはできるという感覚
- 関係性:誰かとつながっているという感覚
見てほしいのは、自律性と関係性が「どちらかを選ぶもの」として扱われていない点です。両方とも満たされる必要がある、と位置づけられています。
つまり「一人でいたい」と「つながっていたい」は、別々の欲求です。片方を選べばもう片方が消えるわけではありません。両方あるのが標準の状態です。
そう考えると、「一人でいたいのに寂しい」は矛盾ではなく、二つのうち片方が今うまく満たされていないというサインとして読めます。
どちらが飢えているのかがわかると、次に何をすればいいかが変わってきます。
どちらが飢えているかを確かめる質問
寂しさを感じたとき、自分にこう聞いてみてください。
「今の私は、誰かと話したいのか。それとも、自分の時間が欲しいのか」
答えが前者なら関係性、後者なら自律性が飢えています。
ここを取り違えると、対処が全部裏目に出ます。
寂しいから人に会おうと思って予定を詰めたのに、会ったあとで余計に消耗した。この経験、ありませんか。飢えていたのが自律性のほうだった場合に起きます。人に会えば会うほど、自分で選ぶ時間が減っていくので、当然しんどくなります。
逆に、一人の時間を確保すればいいと思って部屋にこもり続けて、かえって沈んでいくこともあります。こちらは関係性が飢えていた場合です。
同じ「寂しい」でも、必要なものが正反対になります。
関係性が飢えているとき
会う人数の問題ではありません。
友達も恋人もいるのに寂しい、という方がいます。孤独感は一人かどうかではなく、自分を出せているかどうかで決まることが多いからです。
たくさん会っているのに、そこで話しているのが当たり障りのない話ばかりだと、関係性の欲求は満たされません。人といる時間と、つながっている時間は別です。
だから対処としては、会う量を増やすより、一人に対して少しだけ本音を混ぜるほうが効きます。「実は最近しんどくて」の一言でいいです。
自律性が飢えているとき
こちらは、予定を減らすのが対処になります。
日中ずっと、誰かの都合で動いていませんか。仕事の締切、家族の予定、返事を待たせている連絡。全部が「自分で選んだこと」でないとき、自律性は削られ続けます。
回復に必要なのは、休息よりも「自分で決めた」という感覚です。だから、寝るだけでは戻りません。
何を食べるか自分だけで決める。誰にも報告しない時間を30分作る。行き先を決めずに歩く。内容は何でもよくて、自分が選んだという事実のほうに意味があります。
なぜ、夜に強く出るのか
昼間は感じなかったものが、夜になると浮かんできます。理由は二つあります。
役割から外れるから。 仕事中は社員として、家では母や娘として、私たちは何かの役をやっています。夜、その役が終わったときに素の自分だけが残ります。役割を通じて表面的に満たされていた関係性の足場が、そこで一度なくなります。
気を紛らわせる材料がなくなるから。 昼はタスクが意識をそらしてくれています。夜はそれがないので、日中ずっとそこにあった感情に、ようやく気づきます。
夜になると寂しくなる、というより、夜になってはじめて寂しさが見える。順番としてはこちらのほうが実際に近いと思います。
スピリチュアルな見方では、夜は内側に向かうエネルギーの時間帯とされます。外向きに動いていたものが、内側を見る方向に切り替わる。寂しさが夜に出るのは、その切り替えのタイミングだから、という読み方です。信じても信じなくても構いませんが、夜に自分の状態が見えやすくなること自体は実感と合っています。
埋めようとすると、続きます
寂しさがつらいとき、何かで埋めようとしてしまいます。必要以上に食べる。お酒に頼る。本当は会いたくない相手に連絡する。
その気持ちはよくわかります。ただ、埋めるという発想は、穴があることを前提にしています。埋めるたびに、穴があるという前提が強化されます。だからまた同じ場所が空きます。
そこにあるのは穴ではなくて、満たされていない欲求です。何が足りていないかを見たほうが、結果的に早く落ち着きます。
承認が欲しくなるとき
恋人からの言葉、仕事での「ありがとう」、SNSの反応。あると安心して、ないと不安になる。
人として当たり前です。ただ、反応が少し途切れただけで「私は必要のない人間かもしれない」まで行ってしまうなら、少し負荷が高すぎます。
こういうとき、飢えているのは関係性というより有能感のほうであることがあります。自分にはできるという感覚が薄れていると、その確認を外に求めるようになるからです。
対処としては、他人の評価が要らない小さな達成を一つ持っておくことです。誰にも言わなくていいし、役に立たなくていいです。「これができた」と自分で確認できることが一つあると、外からの反応を待つ強さが下がります。
今夜できること
無理に明るくならなくていいです。感情を否定したり、忙しさで紛らわせたりしなくて大丈夫です。
まず、さっきの質問を自分にしてみてください。誰かと話したいのか、自分の時間が欲しいのか。
答えが出たら、それに合うほうを少しだけやる。連絡を一件だけ入れる。あるいは、通知を切って30分だけ何もしない。
答えが出ないなら、それでも構いません。「今日はわからない」で寝てしまってください。わからないまま朝が来ることのほうが、実際には多いです。
よくある質問
Q. 友達も恋人もいるのに寂しいです
A. 人数の問題ではなく、その関係の中で自分を出せているかの問題です。当たり障りのない会話ばかりだと、関係性の欲求は満たされません。関係を増やす前に、一人に対して少し本音を混ぜてみてください。
Q. 寂しさを感じるのは弱いからですか
A. 感じ取れているだけです。感情に気づけない状態のほうが、実は対処が難しくなります。気づけているなら、手が打てます。
Q. 一人の時間が好きなのに寂しいのは、性格の問題ですか
A. 性格というより、欲求のバランスです。内向的な人は一人の時間で回復しますが、だからといって関係性の欲求がないわけではありません。一人が好きなことと、つながりを求めることは両立します。
Q. 毎晩続いています
A. まず、毎晩感じているという事実をそのまま認めてください。解決しようとしなくていいです。ただ、眠れない、食欲がない、日中も気力が出ないという状態が2週間以上続いている場合は、心の不調として起きている可能性があります。カウンセラーや医療機関への相談も選択肢に入れてください。
Q. 「自分を大切にする」が、具体的にわかりません
A. 自分の状態を確認する、くらいの意味で捉えてください。今日は何が足りていないか。それを見て、足りないほうを少し足す。抽象的な自己愛の話より、こちらのほうが実行できます。
まとめ
一人でいたいのに寂しいのは、あなたが不安定だからではありません。二つの欲求を両方持っている、普通の状態です。
つらいのは、どちらが飢えているかわからないまま、間違ったほうを足してしまうときです。
今夜、寂しさが来たら、一度だけ聞いてみてください。誰かと話したいのか、自分の時間が欲しいのか。
そこがわかれば、少し楽になります。
参考
自己決定理論(Self-Determination Theory)公式サイト https://selfdeterminationtheory.org/theory/
American Psychological Association「Self-determination theory: A quarter century of human motivation research」 https://www.apa.org/research-practice/conduct-research/self-determination-theory
※この記事は心の整理のための情報提供を目的としたもので、医学的な診断や治療に代わるものではありません。気分の落ち込みや不眠が続く場合は医療機関にご相談ください。
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